アメリカで広まった「静かな退職」という働き方・考え方が日本でも広まっています。
Z世代やシニア世代だけではなく、30代などの働き盛りでもそういった考え方をする人が増えているようです。
こういった話が出ると「けしからん!」というような論調も多く見かけますが、
筆者の意見としては、こういった選択も「あり」だと思っています。
長いキャリアのなかで仕事へのモチベーションに波が出ることは当然ですし、
仕事に身が入らない事情もさまざまだと思います。
本人の指向性だけではなく、こういった考えが増える組織や社会の状況についても見ていきます。
静かな退職(Quiet Quitting)とは
静かな退職(Quiet Quitting)とは
静かな退職とは、キャリアアップや昇進を目指さずに必要最低限の仕事をこなす働き方のことです。
退職が決まった従業員のような余裕を持って働くことを指し、仕事とプライベートの境界をしっかり分け、
ワークライフバランスを重視する働き方です。
2022年にTikTokでアメリカのキャリアコーチが提唱した「静かな退職」は、特にZ世代を中心に広まっています。
この働き方は、仕事を人生の最重要項目と捉える考え方に反対する動きとして注目されています。
日本の状況
アメリカだけではなく、日本でも静かな退職を考える人が増えています。
Z世代だけでなく、30代・40代・50代にも多く存在し、自身の生活の質を重視しながら働く姿勢が広まっています。
考えられる要因
時代の変化
一昔前の長時間労働が当たり前とされていた価値観から、
現在では、法規制やコンプライアンスが厳しくなり、法外な長時間労働が禁止されていたり、
それを良しとしない価値観が広まっています。
近年の働き方改革関連法案の推進の影響もあり、こういった考え方も普及してきました。
こうした時代の変化も「静かな退職」のような考え方の広がりに寄与していると考えられます。
会社への期待が下がっている
こういった話題が出ると、「そんなのはけしからん!」というような意見も見かけますが、
「静かな退職」をする人たちは、必要最低限の仕事はしているのです。
本来であれば、給与分の仕事をしているのであれば、問題はないはずです。
しかし、人事評価を相対評価的に判断し、昇給・昇格も他の従業員との比較で決めているため、
基準が上がり続けていることが多くあります。
それでも社内にたくさんポストが存在し、業績も給与も上がり続けているのであれば
モチベーションを保てる人もいるでしょう。
しかしなかなかポストが空かなかったり出世レースから外れたり、昇給もそれほど見込めないという状況では、
「がんばっても意味がない」と思う人が出ることは自然なことです。
もらえる可能性の低いにんじんをぶら下げて、「がんばれ」と言っても通用しなくなっているということでしょう。
定年までその会社に居続ける可能性が高かった高度経済成長期とは異なり、
大きな会社であっても経営が悪化したり倒産をする事例も多数見受けられます。
そういった状況のなかで給与以上に会社に貢献することに対して、
得られる見返りや期待が少なくなっていることも大きな原因かと考えます。
逆に言えば、会社への精神的な依存度が下がっているとも言えるかと思います。
報われない感
最初から「静かな退職」をしたいと考えていたわけではなく、
一生懸命働いてきたけれども、その努力が報われなかったり、
一生懸命にやらなくても優遇されている人がいることなどを知り、「静かな退職」へとシフトしていく人もいます。
本人の指向性によるものだけではなく、組織の状況がそのように考える人を生み出していることも多いにありえます。
社会構造の変化
年金の支給開始年齢の引き下げや定年後再雇用が増えるなど、
「60歳まで働けば辞められる」ということではなくなったことも要因として考えられます。
いつまで働けばいいのかわからないような状況であれば、短期決戦で無理をするよりも、
細く長く続けられるように、プライベートや自分の健康との両立を重視する人が増えてもおかしくはありません。
30代の労働者における静かな退職の増加
日本では、Z世代や40、50代だけではなく、働き盛りとされてきた30代の労働者の間でも
「静かな退職」が増加しています。
増加の背景と理由
この増加の背景として、コロナ禍による経済の混乱や働き方改革の進展などが挙げられます。
また、価値観の多様化により、仕事一辺倒ではなく趣味や家族との時間を大切にする人が増えた傾向もあります。
30代の特徴と静かな退職の関連性
30代特有の特徴としては、結婚や出産などの大きなライフイベントが起きやすい年代でもあり、
ワークライフバランスを重視する人も多数います。
また仕事の面でも、ちょうど新人や一般職層から中間管理職になり、仕事上でもプレッシャーが増えたり、
会社の上層部とのやりとりも増え、会社や上司に不信感や無力感を抱いたことなどがきっかけとなり、
静かな退職へと向かう場合があります。
「静かな退職」は仕事や会社に疲れてしまったときの移行期間
冒頭でもお伝えした通り、筆者の意見としては、「静かな退職」という選択肢は「あり」だと考えています。
長い職業生活のなかで仕事にばかりエネルギーを割けない時期や状況があるのは当然だと思いますし、
会社の評価や組織の歪みからなかば諦めの境地になるということを経験する人は多くいると思います。
そういったときに、次のチャンスや力を注げることを見つけるまでの移行期間として、
ゆるやかに働くという選択肢は決して悪いものではないと思います。
筆者自身もこれまで何度もそういった状況や心境も経験してきました。
特に転職をする直前などは、本業はこのような状況になっている人も多いのではないでしょうか。
ただし、あまりにも長くこの状況が続くことはご自身にとって健全な状況ではありません。
たとえ生活費を稼ぐためだと割り切っていても、一部だとしても人生の大切な時間を過ごすことになるためです。
その分の時間も自分の好きなことややりたいことに費やせるようにシフトしていくことがおすすめです。
「静かな退職」を考えたときのおすすめの過ごし方
本業で常に100%の力を出す必要はありません。
ただし、他の人に迷惑をかけることはよくありませんし、
あまりにもパフォーマンスが落ちると降格や退職勧奨の候補となってしまう可能性もあります。
それを防ぐために必要最低限の業務をこなしうまく立ち回りつつ、
ご自身の生活を重視したり、副業、転職活動、資産運用など
次のキャリアや生き方を実現するための行動に比重を置いていきましょう。
自分に合った働き方や生き方を模索することで、より充実した人生を送ることができる可能性が高まります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
時間もエネルギーも有限です。
すべてに常に全力で取り組むということは難しいです。
無理をしすぎず、緩急をつけながら長い職業生活を生き抜くために、
「静かな退職」という選択肢も視野に入れられてみてはいかがでしょうか。